interview on 2020.8.5
「どーも! 『山ん中ちゃんねる』のばっしーです」「ウェンツです」「ずっきぃです」「よろしくお願いしまーす!」
元気な声、笑顔で画面に登場する三人。その背景は、時に川、時に山、時に街、時に暗闇?! 春日のいろいろな場所、そしてたまには地区を飛び出してさまざまな角度から田舎の魅力や楽しみ方を伝えているYouTubeチャンネル「山ん中ちゃんねる」は、2020年3月1日にスタート。週2回の更新を続け、公開済みの動画は開設から半年で50本ほどになった。
嬉野市内で会社を経営するばっしー(中林正太)、地元嬉野を離れて働いたあと偶然同じタイミングで帰郷した同窓生ウェンツ(植林雅史)と ずっきぃ(川島瑞紀)……というバックグラウンドはいっさい関係なく、3人のいい大人が子どものように、いや、なんなら子どもよりも無邪気に自然とたわむれる。動画を見ていると、この人たちはただ遊んでいるだけなのでは、という気がしてくるほどだ。そして3人に話を聞いてみると「企画はあってないようなもの」「撮影は口実」と、想像以上に自由すぎる発言が。
しかし、話を掘り下げてみると、自分たちが本気で楽しむ中で気付いた春日の魅力、自分の中の変化、そして視聴者と共有したい思いが見えてきた。
撮影は口実⁈ やりたいことをやる!
山ん中ちゃんねるの動画一覧を眺めていると、「無人直売所作ってみた」「お茶を揚げてみた」「養蜂に挑戦」「タケノコ掘り」「サバイバル料理」「ピザ窯」「魚釣り」と、なんとも好奇心をくすぐられるワードが目に飛び込んでくる。こうした企画を繰り出すために、さぞ熱心に会議を重ねているものと思いきや……
ばっしー:いや、企画はあってないようなもので(笑)自分たちがやってみたかったことを、撮影を口実にチャレンジしている感じです。とりあえず遊んでいたら思いのほか盛り上がって「これは撮るべきだよね?」と急いでカメラを取りに行くとか、そんなノリ。
例えばこちら。釣り企画の下見のつもりだったが、予想以上にめちゃくちゃ釣れておもしろかったので、そのままコンテンツとして仕上げたという(#40)。春日渓谷の美しさ、すがすがしさがリアルに伝わってきて、なにより楽しそうで、下見を見せられているにも関わらず、うっかり心をつかまれてしまう。ちょっと悔しい。
ウェンツ:高菜漬け(#11)も、まさにそうですよね。初めてやってみたんですが、こんなふうにやるのか!と驚きがたくさんあって良い経験をしました。
耕作放棄地で育った高菜の収穫からスタートし、漬物を作った回だ。視聴者から「演技なしで楽しんでるのが見てていいなぁって思います」とのコメントも寄せられている。演者・制作者である前に、それぞれが本気で楽しむひとりの体験者だからこそ、見ているほうも新鮮な驚きをもって山ん中暮らしをシミュレーションできるのだろう。そうしているうちに、実際に行って体験してみたい気持ちが高まってくる。もう一度言うが、ちょっと悔しい。
春日の楽しみ方を創造している
そんな彼らが、全力で遊ぶ……じゃなかった、動画制作活動をする中で気付いたこととは。
ずっきぃ:春日にはなにもないと思っていたけれど、山ん中ちゃんねるをやることで「いっぱいある!」と気付きました。工夫次第で遊べるところがたくさんあるし、やりたいことや楽しみを自分たちでなんでもつくれる場所です。
よく言われる「田舎にはなにもない」は、ただ「見えていない」だけなのだろう。それを可視化してくれるのが、山ん中ちゃんねるなのか。
ずっきぃ:特に印象に残っているのは、竹でごはんを炊いたこと(前編 #7 後編 #8)! 私の家の前にも竹やぶがあって身近な存在だったのですが、それでごはんを炊くという発想はまったくなかったんですよね。
竹やぶから採ってきた竹で飯ごうを作り、炊飯した企画だ。これぞサバイバル料理。
ばっしー:そういえばずっきぃ、この後にも「竹ください」って来たよね?
ずっきぃ:そうそう、動画を見た職場の仲間に「バーベキューするから、竹ごはん炊いてよ!」って言われて、ばっしーさんに竹をもらいに行って作りました。みんなおいしく食べてくれましたよ。
ウェンツ:僕も、ピザ作り体験の回(#38)を見た友だちから「子どもを連れて行きたいんだけど」と場所を聞かれたりしました。
高菜、ごはん、ピザ……聞いているだけでおなかがすいてくる。この人たちは自分たちが食べたいものを作っているだけなのではないかと思うが、そうではないらしい。田舎の遊び方、自然との触れ合い方、春日というまちの楽しみ方。そういうものを、彼らは創造しているのだ。
このまちが、人が、私を動かした
最近、ずっきぃは自分の中である変化を感じているそうだ。
ずっきぃ:畑づくりに挑戦した回があるんですが(#10)、うまく作物を育てられずに結局ダメになってしまったんですね。私それがとても悔しくて。どうしてもリベンジしたくて、今、イチからやり直しているんです。畑を耕して、忙しくてもできるだけ頻繁に見に来るようにして。
でもそれって、ばっしーさんたち春日に関わっている皆さんが、ずっとしてくれていたことなんですよね。畑のお世話、動物のお世話、地域の方たちとのコミュニケーション……私もこうして関わらせてもらうようになったひとりとして、何か還元できないかなって思うようになりました。地元でもなく、住んだこともない、なんの関係もないまちだったのに、いつの間にか大切な居場所になっていて、愛着がわいている。この土地も、景色も、人も、いいところは変わってほしくないし、この良さをそのまま皆さんに伝えていきたい。今あらためてそう思っています。
ずっきぃの住まいは同じ嬉野市内だが、春日まではちょっと距離があるし、何かのついでに通る場所でもない。それでも、来たい、やりたい、やる。ひとりの人をそこまで動かすパワーの源は、単に野菜が作れなかった悔しい気持ちだけではないはずだ。
美しい景色があり、田舎遊びを楽しめるのは、それを支え守る人の汗、人の心があってこそ。それに気付いたずっきぃの行動もまた、これから誰かを動かしていくことだろう。
この思いを皆さんと共有したい
さて、そんなこんなで山ん中ちゃんねる、どんな未来に向かっているのだろうか。
ウェンツ:今は僕たちから田舎の楽しみを発信しているわけですが、それを今後は見てくれている方たちに体験しに来てもらうのが理想です。魚釣りとかサバイバル料理とか、そういうアクティビティができるイベントを開催したら、たくさんの人に来てもらいやすくなるんじゃないかなと。
たしかに、これまで3人でしてきたことを大勢でやったら、もっとおもしろそうだ。
ウェンツ:嬉野で育った僕たちでさえ新鮮に感じることばかりだったので、都会から来る人たちがどんな反応をするのか、今から楽しみですね。
ずっきぃ:そうそう、私たちだけで楽しむのが目的ではなくて、こういうことを皆さんと一緒にやりたいんですよっていう紹介動画なんです、山ん中ちゃんねるは。
ばっしー:この「ありのまま春日」サイト内にある「春日を楽しむ」というコンテンツも、実はそんな話から生まれたんですよ。山ん中ちゃんねるからこのサイトを知った人が「これ実際に体験しに行けるんだ!」と思ってくれたらうれしいですし、来てもらえたら最高ですよね。
田舎遊びのおもしろさ、春日というまちの魅力、それに触れる喜びを、画面の向こうにいるたくさんの人と共有したい。そんな思いを胸に、3人は今日もカメラを抱えて田舎道を行く。もちろん、自分たちが思いっきり楽しみながら。