Beauty.03
はるっち
春日は私の
「もうひとつの住処」

分校Cafe haruhi スタッフ はるっち

interview on 2020.8.5

嬉野市の温泉街から南東に15分ほど車を走らせると、山のあいだにポツンと佇む平屋の建物がある。それが嬉野町立吉田小学校春日分校だったのは、2001年までのこと。統廃合により学舎としての役目を終えたその場所は現在、県内外から多くの人が訪れるカフェとして生まれ変わっている。

「分校Cafe haruhi」。そう書かれた看板がある入口の扉を開けると、穏やかな笑みを浮かべる一人のスタッフの姿が目に飛び込んできた。2020年春から働き始めたという、塚本はるかさん。通称「はるっち」だ。

嬉野市と同じ佐賀県南部エリアの太良町に住んでいながら「春日という地区があることすら知らなかった」と言うが、働くことを通して関わりを持った今、彼女はこのまちをどのように感じているのだろうか。

ゆったりとした空気を維持したい

理学療法士の資格を持ち、病院勤務を経て2020年春に地元太良町で腰痛専門サロンを開業したはるっち。haruhiで働き始めたのは、独立と同時期だ。「理学療法士しかしたことがないので、他の仕事も経験して視野を広げたいと思っていたんです。私自身、いつか人が集まる場所をつくりたいという思いもあり、勉強を兼ねてカフェで働くことを希望しました」と話す。

「インスタグラムでharuhiのアカウントを見ていると、いろんな人が写っていて……特におばあちゃんたちが楽しそうに集っている姿が印象的で『素敵!』と気持ちが盛り上がりました」と目を輝かせる。人が好き、特におじいちゃん・おばあちゃんが大好き、そんな気持ちがあふれ出た。

「haruhiはのんびりした場所というイメージでしたが、実際に働いてみるとけっこう忙しかったり(笑)。でも、皆さんゆったりした雰囲気を求めて来てくれているので、そういう空間を維持できるよう、厨房ではどんなにバタバタしても、店内では穏やかな口調や動作でお客さんと接することを心がけています」。接客のプロとして、ひとりの人として。人と向き合うまっすぐな姿勢が、そこにあった。

まちへの思いが人をつないでいる

そうして、新しい場所に少しずつ溶け込んでいったはるっち。「嬉野市に近い町に住んでいながら、春日という地区があることさえ知りませんでした(笑)」と言うが、今このまちに対してどんな思いが芽生えているのだろうか。

「あのインスタグラムで見た春日のおばあちゃんたちが、目の前ですごく楽しそうに話していて。そんなにしゃべるんだってビックリしたくらいです。『アンタ!』なんて言ったりバシッとたたいてツッコミを入れたりしていて(笑)。でもそこに愛があるというか、口調は強くても、その中に優しさを感じるんですよね」。

飾りっけなく、おおらかで、時に力強く、どこまでもあたたかい人たち。それはまるで、春日のまちを包み込む自然そのもののようでもある。

おばあちゃんたちに限らず、ここでは常連客やスタッフ、経営者まで皆フラットにつながって交流している印象だ。「やっぱりみんな、この春日を未来に残したいという気持ちがあるからだと思います。正太さん(中林正太/ありのまま春日 発起人/分校Cafe haruhi オーナー)が先頭に立って取り組んでいて、それに共感する人たちが動いたり、協力したり。それがあるから、団結しているんじゃないかな」。

春日に住む人、働く人、遊びに来る人、好きで何度も通う人。立場や関わり方は違っても、このまちを次の時代につなぎたいという共通の思いがあるからこそ、人と人の良質なつながりが生まれ、周囲がなんともやわらかい空気感に満ちるのだろう。

私のもうひとつの住処みたいな場所

撮影:はるっち

春日の空気や人の心に触れ、はるっちは今、ますますこのまちへの思いを深めているようだ。「今は私も皆さんと同じように、春日を未来へ残したいという気持ちになっています。地元と同じくらい愛着もあるし、もうひとつの住処みたいな」。

そんなはるっちに改めて春日の好きなところを聞くと「空!」とひとこと、元気よく返ってきた。「電線もビルもなく、なんにもじゃまする物がなくて。見上げると心にゆとりが生まれるというか、ほんとうにホッとする。自慢したくなる景色です」。

「とにかくゆっくりした時間が流れているのが、すごく好き。ここに来れば、子どもに戻ったみたいに自然と触れ合えるし、自分をつくらなくていい。すっぴんでも、短パン姿でもいいんです。 みんな来てほしいな」。春日のことを語ると、言葉が尽きない。そんなはるっちは、もうすっかり春日のひとだ。

春日のうつくしびと. 03

分校Cafe haruhi スタッフ はるっち
太良町在住。2020年春より分校カフェharuhiで働き始める。腰痛専門のサロンを主宰。好きなことは、写真を撮ること、小物作り(粘土アート等)、カフェ巡り。
記事一覧